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記事一覧

涙。

涙。片思い一人の少女が恋をした。優しそうな若者に。内気な少女は告白できず、黙って彼を見詰めていた。やがて、彼に彼女が出来て、少女の恋は終わりを告げた。春の花が舞う頃に、思い出は何度も蘇る。時ならぬ雪が降るように、花さながらに散った恋……母のない子その子の母は幼い頃に、我が子を置いて逝ってしまった。「この子が、この子が」と女は泣いた。「まだ死ねないのに」と号泣した。夫は黙って涙を流し、それでも毎日、弁...

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葬送行進曲。

葬送行進曲。ショパンの調べが重く流れる。人一人の命が失われたのだ。人々は一様に黒い服を着て、無言で葬儀に参列する。仏教なら低い読経の声が、キリスト教なら祈りの声が、死者の冥福を祈るだろう。ある人は隠しきれずに涙を流し、ある人は黙って涙をこらえている。ある人は冷静を装いながら、胸張り裂ける思いでいる。だが、ある人は義理で参列し、早く終わらないかとイライラ思う。ある人は今夜の献立を考え、ある人はざまあ...

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森。

森。切り開かれた森の中、木漏れ日が淡く差し込んでいる。曲がりくねった小道をゆけば、カサカサカサと木の葉が騒ぐ。初夏の風がざわざわと、辺りを鳴らして過ぎてゆく。どこかで鳥が鳴いている。道は何処まで続くだろう。夜の街。物寂しげな街灯が、暗い通りを照らしている。十字路の青い信号が、無言のままで光っている。鞄を抱えて帰る人、自転車に乗る高校生、全財産を肩から掛けて、歩き続けるホームレス。街灯もない歩道では...

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虹。

虹冷たい雨がじとじと降った。空は灰色、陰鬱だ。薄暗いから朝、目が覚めず、月曜などは最悪だ。傘を差してもいじけた風が、横殴りに雨をぶつけてくる。古びた靴の底から水が、靴下までも濡らしてしまう。職場には嫌な上司の野郎が、今日もがみがみ文句を言う。同僚達は素知らぬ顔で、他人の不幸を笑っている。疲れ切って家に帰れば、我が子の成績伸び悩み。大人でさえ生きづらい世に、子供達まで競争、受験。逃げ場のないくすんだ...

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人と自然。

人と自然。晩春ブラックベリーが青い実をつけた。桑の実は黒く熟している。ムクドリ達が大喜びで、甘酸っぱい実を食べに来る。時にはスズメもお相伴。潤んだ空は小雨を降らし、大気は澄んで心地よい。時には真夏日、耐えられないが、それも仕方がない事だ。もうすぐ夏も近いから。日中は焼け付く太陽が、はるかな大地を照らしている。坂道では逃げ水がぎらぎらと、小さな幻影を見せている。陽炎もゆらゆら揺れている……夜半には涼し...

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