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春よ来い。春よ恋 …… 

春よ来い。春よ恋 ……     ―挽歌(レクイエム)―
     

桜咲き、そして桜散る……

アジア太平洋戦争の終わり頃、
ある若者が特攻隊で、
死出の旅路に就く事を、
軍部に命令されたのです。

軍の命令は絶対でした。
逆らったら拷問されて、
軍法会議で銃殺になり、
家族も国賊と呼ばれます。
選択の余地などどこにもない、
それが戦争の現実です。

若者はわずか17歳。
目の前が真っ暗になったけど、
家族や愛する人を守るためだと、
悲しく彼は諦めたのです。
人を愛したいという願いも、
生きたいという願いさえも……

若者には結婚を約束した、
可愛い許嫁がおりました。
彼女の年は15歳、
同じ村で育った幼馴染です。

村はずれの大きな桜の下で、
悲しさと寂しさと、
断腸の思いで胸が張り裂けそうになりながら、
彼は彼女に別れを告げました。

「僕はお国のため、天皇陛下のため、
 特攻隊の隊員として、
 立派に散って参ります。
 僕の最後の願いです。
 どうか君は僕を忘れて、
 良い人と結婚して、
 僕の分まで幸せになってください。」
 
可哀想な彼の恋人は、
悲しさと絶望とで、
振り向く事もできずに涙を流し、
万開の桜を見つめて切なく言いました。

「いいえ、私は絶対に、
 生涯、誰とも結婚しません。
 私の夫はあなただけ……。
 戦争なんて負けても良いの。
 もうこんな殺し合いは絶対に嫌。
 なぜ罪もない外国の人達を、
 殺したくもないのに殺さなければならないの?
 海の向こうの人達にも、
 愛する人が居るでしょうに、
 死にたくなんかないでしょうに……。
 私はあなたのために、
 そしてみんなのために、
 早くこの戦争が終わるように、
 命をかけて祈り続けます。」

幸いにもその辺りには、
警察官も憲兵も村人も、
誰一人として居ませんでした。
もしも誰かに聞かれていたら、
勇敢で優しいこの少女も、
即座に連行されて拷問され、
なぶり殺しにされたでしょう。
皆さんはご存じないでしょうが、
日本人はそんなことをしていたのです。
戦争とは殺し合いであり、
理不尽と残酷さの集合です。
戦争の犠牲になったのは、
決して外国の人達だけではありません。

「――ありがとう……
 僕も決して君を忘れない。
 死んでも君を忘れない。」

若者は娘を抱きしめて、
二人で涙を流したのです。

辺りにはだれも居ませんでした。
そう二人は思い込んでいましたが、
年取った巨きな桜の樹は、
泣きながら二人を見つめていたのです。

誰も気づいていませんが、
植物は限りなく優しくて、
美しい花を咲かせながら、
人間にそっとささやいているのです。

「私には何もできないけれど、
 どうか私の花を見て下さい。
 悲しみの世に生きるあなた達に、
 せめて私の愛を捧げましょう。」

――若者は数日後、出征し、
帰らぬ人となりました……

敵の空母に体当たりして、
死をもって相手を殺すのだ、
そう上官は命じましたが、
彼の戦闘機は高性能の高射砲で撃墜され、
虚しく海の藻屑と消えたのです。

アメリカは兵士を大切にして、
どんなことをしてでも生き残れるように、
最先端の装備とパラシュート、
負けそうなら生きて帰国できるように、
十分な燃料を搭載させ、
戦闘現場には救援ボートを待機させ、
一人の死傷者も出ないようにして、
パイロットにも十分な訓練をさせていたのです

ところが愚かな日本の軍部は、
兵士が死ぬのに無頓着でした。
次から次へと、
無駄に兵士を死なせたために、
高度な技術を持ったパイロットが居なくなり、
不十分な訓練だけで、
無理やり若者や少年達を徴兵し、
十代の人々を使い捨てたのです。

技術も燃料も与えられぬまま、
自殺攻撃を強制された、
哀れな日本の若者達は、
体当たりする事もままならず、
次から次へと撃墜され、
無駄に犬死にしたのです。

この若者も同じ事でした。
若者を死なせた調本人は、
決してアメリカ軍などではなく、
自己保身だけで戦争を強行した、
日本の軍国主義者達、
戦犯達であったのです。

残された娘は誰にも聞かれぬように、
あの村はずれの桜の木の根元に身を投げて、
悲しみと絶望のあまり号泣しました。
もし誰かに聞かれていたら、
やはり半殺しにされたでしょう。

「お国のために立派に許婚者が死んだ、
 それは名誉なことなのに、
 神として靖国神社に祀って頂けるのに、
 喜ぶべき誇らしいことなのに、
 貴様の態度は一体何だ!
 恥を知れ、この国賊め!」と。

軍国主義は愛する人が死んだ時にも、
泣くことさえも許しません。
湯川さんを助けるために、
命がけで助けに行ってISに捕まった、
後藤さんが殺害された時と同じです……。

でも、それだけでは済まないのが戦争です。
哀れな少女は軍需工場で働かされ、
埃だらけの劣悪な環境で、
昼も夜もなくパラシュートを作らされました。
食べ物も十分にないままで、
娘は重労働に明け暮れて、
最初は微熱、それから寝汗、
最後は激しい咳の末、
とうとう喀血したのです。
末期の肺結核でした。

少女は自らの死期を悟って、
苦しみながらお母さんに言ったのです。

「おかあさん、
 死ぬ前にどうか私を、
 あの人との思い出の場所、
 あの桜の木の下に連れていって。」

お母さんは泣きながら、
娘の願いを叶えてやりました。
桜の花はとうに散って、
瑞々しい青葉を茂らせておりましたが、
可哀想な少女は、
微笑みながらじっと桜を見て、
それで満足したかのように、
数日後に眠るように息を引き取ったのです……。
お父さんは黙って唇を震わせ涙を流し、
誰にも聞かれていませんでしたから、
お母さんは泣き叫んだのです……

桜の木はこれらの全てを、
最初から最後まで、
泣きながら見つめておりました。
泣いて泣いて泣いたのです。
それから一週間も経たない内に、
悲しみがあまりに深かったので、
やさしい老いた桜の木は、
根こそぎ枯れてしまいました。

桜咲き、そして桜散る……

少女が死んで数日後、
日本は二度も原爆を落とされて、
やっと戦争が終わったのです。
命を懸けた少女の祈りが、
神様に叶えられた瞬間でした。

他者のための清らかで真摯な祈りは、
きっと必ず聞き届けられますが、
その時期は人にはわかりません。

あと数カ月早ければ、
少年は死なずに済みましたし、
あと数日早ければ、
少女は生きて終戦を知ったのに……

日本が負けて終戦になったのは、
少女が息を引き取った、
わずか数日、
わずか数日後の出来事でした……

戦争末期の日本において、
数え切れないほど起きた悲劇、
本当にあったお話です。

春よ、こい。
平和な時代の春よ来い。
万開の桜に祝福された、
切ない二人の春の恋が、
もう決して二度と再び、
こんな形で終わりませんように……

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咲いたよ咲いたよ、平和の花が


咲いたよ咲いたよ、お花が咲いた。
どんなお花が咲いただろう?

咲いたよ咲いたよ、きれいな花だよ。
どうしてそんなにきれいなの?

咲いたよ咲いたよ、平和の花が。
だからそんなにきれいなんだね。


散らさないで、散らさないで、この花を。
どうか風さん、吹かないで。

散らないで、散らないで、きれいな花よ。
どうか雨さん、降らないで。

散らさないで、散らさないで、これは命の花だから。
どうか神様、お願いです。


散らなくても良いものを、
どうして人は散らすのか?

散らずに咲いていられる命を、
どうして人は奪うのか?

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