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天使の涙。

天使の涙。


ある老人

一人の老人が居りました。

長男夫婦が同居してくれたので、
心の中でいつも感謝しています。

やがて可愛い孫が生まれ、
子煩悩な父親は、
目の中に入れても痛くないほど、
孫を愛する祖父になったのです。

ところがある日の事でした。

大切な孫が熱を出し、
いつまで経っても下がりません。

老人は気が気ではありませんでした。

とうとうかかりつけの小児科の先生が、
市民病院に紹介状を書き、
孫は入院する事になったのです。

診断は白血病でした。

主治医は日赤病院に紹介状を書き、
可哀想な幼い孫は、
すぐ化学療法を受け始めたのです。

一旦は寛解したのですが、
2年後に再発してしまったのです。

化学療法の効果は限定的で、
同種骨髄移植を受けましたが、
とうとう余命宣告されました……

「ああ、神様!
 どうか出来る事なら、
 この年よりの命と引き換えに、
 孫の命を助けて下さい!」

老人は泣いて泣いて泣きました。



少女

新学期になりました。

中学生の少年が、
ある少女の隣の席になりました。

普通の地味な娘でしたが、
憂いを帯びた眼差しに、
少年は心惹かれたのです。

内気な少年の初恋でした。

少女も無口な子でしたから、
2人は特に親しくなるでもなく、
授業で必要な時以外、
めったに口も利かなかったのです。

ところがある日、
少年は気付いたのです。
髪で隠していたものの、
少女の額にあざがあることに。

ハッとした少年でしたが、
好きな相手に気を遣い、
何も見なかった振りをしたのです。

けれどもまた別の日に、
少年は少女の頬が、
赤く腫れている事に気が付きました。
額のアザは治っていましたが。

こうした事が何度も繰り返され、
少年は確信したのです。

「この女の子は誰かに暴力を振るわれているのだ」、と。

悩んだあげく少年は、自分の母親に相談しました。

「母さん、うちのクラスに殴られている女の子がいるんだけど。
 どうしたら良いのかな?」

母親は顔をしかめたのです。

「放っておきなさい、そんな子。
 親が暴力団かチンピラよ、きっと。
 関わらないでね。」

少年は何も言えませんでした。
自分だけではなく、
家族まで大変な事になると思ったから。

心の優しい子でしたから、
気の毒な少女に同情した。
心の優しい子でしたから、
家族のために沈黙したのです。

誰も彼を責められません……

それでも好きな少女のために、
少年は不安で一杯になりながらも、
こんな文書を打ちました。

「この組の○○は、
 家族に虐待されている」と。

最初は担任の授業の時に、
担任の目につくようにこの文書を置いておきました。

くだんの担任はどうしたか?

文書を見るや眉をひそめて、
黙ってポケットに突っこんで、
そのままゴミ箱に捨てたのです。

少年は憤りと悲しみで一杯です。

それでもこの善良な少年は、
決して諦めませんでした。
今度は養護教員の机の上に、
この文書を置いたのです。

けれども同じ事でした。

スクールカウンセラーにも同じ事をしたけれども、
やっぱり同じ事でした……

少女はそれからも、
時折、どこかにアザを作ってきました。

少年の胸が痛みます。

何も出来ない自分の無力、
何もしようとしないお利口さんな大人達、
何もしなかった担任と、
何もしなかった養護教員を、
少年は悲しく見つめました。

そんなある日の事でした。

少女は登校して来ませんでした。

そして担任が告げたのです。

「皆さん、彼女は今朝、亡くなりました。
 自ら命を絶ったのです。
 
 自殺をする前に、
 どうか皆さん、
 私かスクールカウンセラーに申し出て下さい。」

自分のクラスから自殺者が出ると、
担任が校長から非難されます。
PTAも黙って居ないでしょう。

(全く、何て迷惑なんだ。
 せめてクラスが替わって、
 俺が担任じゃない時に死んでくれれば良かったのに。
 こっちは良い迷惑だよ)

それが担任の思いでした。

これがこの善良な、
心の清い少年の、
悲しい恋の顛末です……

大人達のうち、誰か一人でも、
少しの勇気を出してくれたなら、
ほんのわずかな良心があったなら、
少女は死なずに済んだのです。


少年

少年の両親は不仲でした。

父親は母親を殴り付け、
腹いせに母親は少年を殴り、
少年は小動物をいじめる事で、
やり場のない怒りを発散させていたのです。

強い物には逆らえませんが、
弱い物ならいじめられる。

畜生も同じ事をしています。

いわゆる弱肉強食です……

こうしてあらゆる侵略戦争が起き、
人々は隣国の人々を、
同じ人間でありながら、
さも劣った者であるかのように、
侮辱し罵声を浴びせた上で、
徹底的に苛め抜き、
残酷な満足感を満たすのです。

こうして姑は嫁を苛め抜き、
虚しい人生の不満を発散させ、
夫は妻に暴力を振るい、
妻は我が子に暴力を振るい、
時には自殺するまでいじめるのです。

弱い者いじめは楽しいから……

少年の家庭も同じ事でした。

やがてぐれてしまった少年でしたが、
ある担任の先生が、
何とか助けてやろうとしたのです。

正義感のある勇敢な、
しかも情け深いこの先生は、
暴力団の末端組織に所属する、
父親の所を訪れて、
何度も説得しようとしたのです。

その度に暴力を振るわれて、
結局何の役にも立ちませんでした。

少年は少年院にぶち込まれ、
前以上に荒んで出所しました。

とうとう暴力団からお呼びがかかり、
少年は父と同じ組員に。

学校にも来なくなりました……

何年も経った頃、
少年は組長に命令されて、
対立する組の幹部を殺しに行き、
逆に殺害されたのです。

新聞にはたったの二行、
小さく記事が載っただけでした。

かつての少年の担任は、
この記事を読んで悲しく顔を伏せ、
心の中で泣きました。

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ミケランジェロ作 La Pietà (ラ・ピエタ)=「慈悲

あじさい

悲しい愛に花束を……
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