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涙。

涙。

赤ちゃんがこの世に生まれて来た。

ほら、真っ赤になって泣いてるよ。

大粒の涙が後から後から、
小さな川になって溢れてる。

(水晶の粒かその涙。
 そのきらめきは小さなダイヤだね……)

狭くて暗くて息も詰まりそうだった。
その苦しみを潜り抜け、
胸いっぱいに酸素を吸っている。

君がこの世に生まれて来た時、
ある親は手放しで喜んだ。
別の親がうんざりして嘆息した。
殺してやろうと思った親もいる。

でも、それは決して君のせいじゃない。


乳飲み子が泣いている、泣いている。

お腹が空いた? おむつが濡れた?
それともおねむ? 暑い? 寒い?
ママが恋しい? 抱っこして欲しい?

新米ママが考える。

おむつを替えたら泣き止んだ。
やれやれ、ママもほっとする。

(……こうして親になっていくんだよ。
 赤ちゃんは泣くだけだから、
 この頃に育児をちゃんとしないと、
 我が子の思いは一生わからない。

 だから日本の父親は、
 我が子の悲哀も怒りも孤独も、
 何もわからず怒るだけ。
 名ばかりの親、何もわかってくれない親)


小さな子供が泣いている。

転んでぶった、ママに叱られた、
理由は様々あるだろう。

おぼつかない自分の足で歩き始めると、
何もかも思い通りにならないから、
小さな子達は怒って泣く。

(少しずつだよ、ゆっくりで良いよ。
 すぐには出来なくて当たり前。
 君のパパもママもおんなじだった。
 おじいちゃん、おばあちゃんも同じだったんだ。
 でも、大人になると忘れてしまう……)


小学生が泣いている。

宿題を忘れた、先生に叱られた。
友達と喧嘩した、いじめに遭った。

もう君の人生は、
大人の世界の延長線。

人生最大のストレスは、
人間関係なんだよ、覚えておいで。


中学生が泣いている。

男の子はめったに泣かなくなった。
代わりにふて腐れて黙って怒っている。

女の子はまだ時折泣くが、
本音を曝け出すのは稀だ。

勉強、勉強、また勉強。
部活に朝練、休日返上。

「先生は忙し過ぎるから、
 部活は少し減らそうか?」
おかしいね。

先生は大人で体も完成しているけれど、
中学生の骨や軟骨は、
まだまだ完成途上だと言うのに。

無理な部活や組体操で、
靭帯や関節、骨を傷めて、
再起不能になる子も数知れず……

でも、子供達の健康は二の次で、
先生の御立場だけは大切に。
何のための学校なんだろう?


高校生が泣いている。

冷え切った家庭の両親が、
とうとう離婚に踏み切った。

兄弟姉妹はバラバラに引き取られ、
夫への恨みと憎悪で荒んだ母と、
妻への嫌悪と憎しみに引きつった父が、
自分が後生大事な親が、
悲しい子供達と向き合えるのか?

毎日毎日母は愚痴ばかり。
父親は我が子に何の関心もない。

「あなた達のせいで私まで苦労する。
 もう生きているのも嫌になる」

母親が憎々しげに我が子に怒鳴る。

「なんで俺ばっかりがこんな目に!
 俺だって人権があるんだぞ!
 少しぐらい好き勝手にして何が悪い!」

咳き込む子供の目の前で、
父親がふんぞり返ってタバコをふかす。

それでも子供と仲の悪い親ならば、
別れもさほど苦痛じゃない。

けれども仲の良かった親と別れるのは、
子供達には悲劇そのものだ。

事故や病気で親が死んだら、
進学も夢も水泡に帰し、
残酷な現実が身に迫る……


大学生が心の中で、
胸張り裂ける思いで泣いている。

表面には出さないけれど、
言葉にも表情にも出さなくても、
悲しんでいないわけじゃない。

全ての希望が潰えた時、
生きる気力を粉砕された時、
最後のプライドまでも打ち砕かれ、
嘲笑われながら踏みにじられた時。

(誰にでもある普通の事さ。
 大人になると忘れてしまうだろうがね)

学資ローンでがんじがらめになり、
就職難で苦しみ抜いて、
ようやく就職できたと思えば、
ブラック企業で奴隷さながら、
延々仕事を強制されて、
睡眠時間も奪われた。

こうしてある大学生は自ら命を絶った。

別の学生は風俗営業へ。

ある学生はいまだに引きこもり、
別の学生は家庭で暴れている。


独身の男女が心の中で、
ほとんど死んでしまった心の中で、
冷たい涙を流している。

給料は安くて非正規雇用。
時間外労働への報酬は、
いずれゼロになってしまうだろう。

夢も希望も未来もない、
先進国とは名ばかりの、
奴隷労働が横行する、
これが日本の現実だ。

彼女が欲しくて彼が欲しくて、
結婚相談所で面談を受けたら、

「あなたには紹介できる相手がおりません」

世にも冷たく職員が告げた。

そうさ、お金も未来もない。
大学だって3流だ。
コネもなければ資格もない。
恋する事すら許されない人生。

それでも歳月が流れれば、
アラサー、アラフォー、アラフィフと、
残酷に老いが迫り来る。


結婚したカップルが心の中で、
荒みきった涙を流している。

(こんなはずじゃなかった。こんなことなら、
 結婚なんてするんじゃなかった……)

かれこれ数年、セックスもない。
近寄られるだけで鳥肌が立つ。

仕事に疲れ家事に疲れて、
育児で睡眠時間もない。

それなのにセックスを要求して、
妊娠しても知らん顔。

育児も家事も一切やらない、母親べったりのマザコン野郎。
とっととくたばれ、このアホウ!

夫は夫で不満で一杯、

(結婚前は猫をかぶってやがった。
 これがこいつの正体か?)

愚かな男。
社交辞令にうつつを抜かし、
相手にだって心があると、
疲れた時にはイライラすると、
そんな事すらわからなかったのか?

人間は神でも仏でもない。

思いやりも配慮も何もなければ、
我がまま勝手で横暴ならば、
最後にはどんな相手でも、
完全に愛想が尽きるだろう。


老人が寂しく泣いている。

でも、泣き声を聞く人は誰も居ない。

子供達は全員、出て行った。

天涯孤独で身体も弱り、
病院に行く気力も体力もない。

認知症を発症すれば、
たとえ体がまだ無事でも、
薬もまともに飲めなくなり、
食事をとるのもままならぬ。

やがて最後の金が尽きれば、
電気も水道も止められて、
真夏には暑さに寝るに寝られず、
真冬には体が氷のようだ。

政府は福祉と医療をカット、

「老人はさっさと死ね」と言う。

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